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腫瘍について

子宮頸癌検診で異常といわれたら

子宮頸癌のできるまで

子宮頸癌は子宮の入口の部分にできる癌ですが、突然できるものではありません。これから説明するように5~10年の間にだんだんとできてくるものです。

子宮頸癌は上に示すように異形成という前癌状態を経て上皮内癌となります。上皮内癌は出来上がったばかりの癌で、まだおとなしく浸潤することができません。妊娠中に上皮内癌が見つかった場合には予定日まで待つことが可能です。しかし上皮内癌を数年放っておくと、浸潤が始まり広がっていきます。

異形成・頸癌の診断

頸癌は細胞診で検査を行いますが、その判定は上に示すようにNILM(正常)以外のものは精密検査が必要になります。あなたは何といわれましたか?もしLSILと言われたなら、それは軽度異形成ぐらいの病変があることが疑われます。また、正常と軽度異形成の判定に迷う場合、異形成があるかもしれないけれども断定できないときなどの場合にASC-USと診断される事があります。
しかし、細胞診はあくまで目安であって最終診断にはなりません。
LSILと診断された方の中には正常な方もたくさんおられますし、上皮内癌の方もおられます。
従ってさらに精密検査を行い診断することが必要です。精密検査はまずコルポスコピ-を行います。これは子宮口を拡大してみるものです。

コルポスコピ-でみると、病巣は白く見えます。そこでこの部分を米粒程の大きさに切除します。
これを生検といいます。
生検を顕微鏡でみることを病理診断といいますがこれが最終診断となります。

異形成・上皮内癌の取扱い

軽度異形成(CIN1) 半分程度は自然に軽快するので様子を見ます。
中等度異形成(CIN2) 自然に軽快する事も多いので様子みますが、パピローマウイルスの型を調べて、高度異形成に進む可能性が高い場合には治療をする事もあります。
高度異形成・上皮内癌(CIN3) 高度異形成・上皮内癌は区別がつきにくいため最近では同じ様に扱われています。基本的には治療が必要です。治療法は病変の状態によりいろいろな方法が選択できます。浸潤するまでにしばらく時間がかかるので妊娠中に発見された場合は分娩後まで待てる可能性が高いです。
浸潤癌 可及的速やかに治療をする必要があります。浸潤がはっきりしない場合は円錐切除をして診断を確定する必要があります。円錐切除については後に述べます。

治療法

各治療法の治療可能な範囲を示しました。もしあなたが上皮内癌といわれたなら、1)レ-ザ-蒸散、2)円錐切除、3)単純子宮全摘術のどれかを選択しなければなりません。ご自身の価値観にあった治療法を選択される必要があります。

1)レ-ザ-蒸散

病巣をレ-ザ-で蒸発させる方法です。局所麻酔で行い、2日間の入院で可能です。
95%くらいの方がこの治療で治ります。蒸発させるので組織の検査ができなくなります。
術前に確実な診断が必要です。
上皮内癌が疑われる場合はLEEP切除(病変部をうすく切除)し、レーザー蒸散を加える事で対応しています。切除をする事で、診断もできます。子宮の欠損は最小限となる方法です。

2)円錐切除

病巣を円錐形に切除する方法です。脊椎麻酔で、5日間程度の入院です。
切除したものを病理検査できるので診断が確実にできます。95%治りますがきれいに取りきれなかった場合は治療を追加する必要があります。

3)単純子宮全摘術

子宮を摘出する方法で、全身麻酔で行います。開腹の方法と膣から摘出する方法があります。腹腔鏡下に摘出する方法も行なっており、この場合は6-7日間の入院で退院可能です。

子宮頸癌とヒトパピロ-マウイルス(HPV)

HPVは皮膚や粘膜に感染していぼを起こすウイルスですが、子宮頸癌の90%以上から検出されます。HPVに感染しているグループからは高率に頸癌が発症することが判明しています。
HPVは主に性行為を介して感染します。HPVに感染しても多くの場合は自然に治癒します。一部の人ではHPVが持続感染し、持続感染した人の一部の人に子宮頸癌の前癌状態の異形成が発症します。異形成になったとしても癌になるまでには5-10年かかるとされているので、この間に見つけることができたら治療が必要な場合でも簡単な治療で治癒します。
HPVの感染を予防するHPVワクチンは、頸癌発症の減少効果が明らかになっています。子宮頸癌の70%に関係するHPVの感染を予防できますが、100%ではないので、ワクチンを打っていても子宮頸癌検診が必要になります。

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