TOP » 一般の皆様へ » 骨盤臓器脱について

骨盤臓器脱について

骨盤臓器脱とは

女性の骨盤の中にある子宮・膀胱・直腸が下がってきて腟の入口から飛び出してきてしまう状態です。骨盤では筋肉(肛門挙筋)や筋膜などで膀胱・子宮・直腸を支えていますが、おもに妊娠・出産で肛門挙筋・筋膜・神経などが損傷を受けると、骨盤臓器の支持機構が破綻して腟の入口から骨盤臓器が落ちてきます。そのほか、肥満、慢性的な便秘や咳なども骨盤臓器脱を起こしやすくするといわれています。
骨盤臓器脱には落ちてくる臓器によって呼び方が異なっており、膀胱が落ちてくれば膀胱瘤、子宮が落ちてくれば子宮脱、直腸が落ちてくれば直腸瘤と呼びます。1つの臓器だけが落ちてくることもあれば、複数の臓器が落ちてくることもあります。

症状

症状で最も多いのが、股の間にピンポン玉のようなものが触れる、重いものを持ったり咳をしたりすると何かが出てくる、歩くときに何か挟まっている感じがするといった症状です。膀胱瘤では、トイレが近い、尿が出しづらい、排尿してもすっきりしない、尿が漏れてしまうなどの症状が出ることがあります。直腸瘤では、便秘や排便困難が出ることがあります。
ひどくなると飛び出てきた臓器を手で戻さないと、排尿や排便がしづらくなることもあります。

治療法

治療法には骨盤底筋訓練、ペッサリー療法、手術療法があります。症状や骨盤臓器脱の程度により治療方法を選択します。

1)骨盤底筋訓練

軽症の骨盤臓器脱には、骨盤底筋を鍛える骨盤底筋訓練が有効です。仰臥位、座位、立位などで腟と肛門を締める運動を行います。この運動で骨盤臓器脱が治ることはないのですが、骨盤臓器脱の進行が抑えられる効果が期待できます。

2)ペッサリー療法

腟内にリングペッサリーを挿入する方法です。根本的な治療ではなく、合併症などの問題で手術ができない場合や手術までの待機期間の患者さんに使用されます。ペッサリー装着後、最初の1年間は1〜3カ月ごとに、その後は1〜6カ月ごとに診察に来ていただき、その効果や腟壁びらんなどの問題がないかを確認します。ペッサリーの自己着脱ができれば、腟炎などの合併症を減らし、性交も可能となります。

3)手術療法

手術方法としては、古くから行われてきた従来手術と人工素材を用いるメッシュ手術に分けられます。
従来手術は、腟から子宮を摘出し、膀胱と腟の間の筋膜や直腸と腟を支える筋肉を補強する腟式子宮全摘術+前後腟壁形成術を基本としています。腟を閉じて骨盤臓器が落ちてこないようにする腟閉鎖術もあります。
メッシュ手術には、腟からの手術で弱くなった骨盤支持組織をメッシュで補強する経腟メッシュ手術(tension free vaginal mesh: TVM)や、腹腔鏡手術でメッシュを用いて骨盤臓器を吊り上げる仙骨腟固定術があります。メッシュ手術は骨盤臓器脱の再発率が低いといわれていますが、まれにメッシュびらんなどの合併症が起こることがあります。2018年から腹腔鏡下仙骨腟固定術(laparoscopic sacrocolpopexy : LSC)を、2021年からロボット支援下仙骨腟固定術(Robot-assisted sacrocolpopexy :RSC)を導入しており、患者さんとの状態と希望に応じた手術方法を選択しています。

ページトップへ戻る